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第22話 菜の花の願い
- その1 -
の青ネギさんが菜の花にさみしそうに囁きます。「菜の花さん、あなたは私の仲間ですね」。斜め上から赤い椿さんも負けずに囁きます。「菜の花さん、あなたは私の仲間ですよね」。早春の空の下、ふっくら蕾の菜の花は答えに戸惑います。いつものようにこの春も思いっきり花開き、お日様色の輝く黄の衣で段段畑を覆うはずだったのに・・。『私は花なの?野菜なの?』と悩んでいます。昨年の春の出来事で菜の花はジレンマに陥って戸惑ったのです。菜種梅雨のある日から・・どんより空の中なのに、人間が沢山押し寄せて『まあ!きれいなお花ねぇ』とか『すてきねぇ、春一番のお花ね』と菜の花を見に来たのです。菜の花としては、お花屋さんでも自分が「花」として売られていることは、そよ風さんの噂で聞いていました。でもここまで人々が眺めに来るなんて思いもよりませんでした。『お花見』と言ったら、桜さんに決まってるんですから。まさか自分が『お花』として喜ばれるなんて・・。段段畑の菜の花は花開く明日まで、青ネギさんと赤い椿さんに答えを出さなければなりません。 つづく
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