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第20話 雪の中のプライド
- その1 -
りしきる雪の中、電線に並ぶカラスの親子がいました。子カラスが言い出しました。「母さん、寒いよ〜」「そうだねぇ」「お腹もすいたよ〜」「そうだねぇ」「皆は、街のごみ置き場でビニール袋を破ってさ〜、エサ食べてるんだってよ〜」「そうだねぇ」「母さん、ぼくたちもそうしないと・・死んじゃうよ〜」「そうだねぇ」「どうして皆のようにしないの?」「人さまに、迷惑はかけられないからだよ」「どうして、それが迷惑なの?」「食べ散らかしたごみのためだよ。カラスの道に反するからね。母さんの母さんも、その母さんも・・この道を守ってるんだよ」「ふ〜ん、でも母さん・・やっぱりお腹がすいたよ〜」「そうだねぇ」。子カラスは、あきらめて肩をすぼめてしまいました。でも、水墨画のような雪国の景色は、ますます空腹を感じさせます。「母さん・・」とぽつんと呼びます。「きっと、エサはみつかるよ」と、母は答えました。「いつまで、こうして待つの?」「みつかるまでだよ、ぼうや」「みつかるかなあ・・」「きっと、みつかるんだよ。神様は、わたしたちを忘れたりしないよ」「ふ〜ん」と子カラスは不満そうに雪空を見上げました。 つづく
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