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第16話 愛の貴公子・ジョイ物語
- その1 -
こは高級住宅街。立派な家が建ち並ぶ中に、朝顔が巻き付いた古いグレーの壁が目立つ三階建てのお屋敷がありました。花を愛する優しい老紳士と一匹の猫ジョイが、この古くて広い屋敷で静かに暮らしておりました。ジョイは生まれた時から、この老紳士の膝の上で毎日毎日<愛と勇気のお話>を聞いて育ちました。「愛に勝る掟はないのだよ。ジョイや」と、いつもお話の最後に締めくくりの言葉を語りジョイを撫でました。この言葉を耳にすると、ジョイは 安心して喉をゴロゴロ鳴らしながら眠るのでした。こうして大きくなったジョイも、明日の夜いよいよこの住宅街の猫社会の仲間入りする年齢になりました。この住宅街の猫達は、毛並みが良く立派な猫のグループです。ジョイは自分がどんな血統か知りませんでしたし、考えた事もありませんでした。とにかく、明日の夜は、36匹目の猫としてデビューするのです。夜、活動する猫社会の近所グループには、どんな仲間がいるのだろう・・。ドキドキワクワクしながら、ジョイは成人いや成猫になった自分の姿を鏡に映して見ます。この家の壁の色と同じグレーのしなやかな姿と、ピーンと張った自分のヒゲに「ニャーン」と静かに鳴いてみました。そして翌日、ジョイは夏の夜の涼しい闇の中へ出かけます。飼い主の優しい声に見送られて・・・。 つづく
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